ツクイヨシヒサの「必筆!仕事人」

マンガ評論家&ライターのツクイヨシヒサによるブログです。酸っぱいブドウの酸っぱさについて、主に語っていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。


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なぜ「タッチ」のダ・ヴィンチニュースは叩かれるのか?


中身があまりにヒドすぎて「声も出ないわ」と話題になっている「ダ・ヴィンチニュース」の
「『タッチ』のタイトルの由来にファン衝撃『驚きすぎて声も出ないわ(呆然)』」という記事。

いったいどこがヒドイのか、テキトーに検証してみます。


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※画像は2016年10月22日(土)18時00分付で、ダ・ヴィンチニュース発として、ヤフーニュースに取り上げられた記事の画面写真です。


【この記事がヒドイ!①】
上杉達也と和也を間違える


文中でいきなり目を奪われるのが、

「なんで『タッチ』で上杉達也を殺したの?」というド直球な質問から始まって……

というくだりです。


「達也」と「和也」の名前をナチュラルに間違えるという、ド直球なミス。
なかなかの剛腕です。


しかしまあ、こういう単純な誤植を見つけて、鬼の首を取ったように喜ぶのはいけません。誰にでも間違いはあるのです。



【この記事がヒドイ!②】
浅倉南の名前を間違える


達也と和也が「オレがアイツで、アイツがオレで」と入れ替わるなか、ヒロインが登場します。

朝倉南の夢を叶えるため甲子園を目指すのだが……




「浅倉南」です。

「朝倉」じゃありません。

執筆者の方は、冒頭で『タッチ』のことを「スポーツマンガの不動の名作」「誰もが知っている同作」と讃えているわりには、どうも記憶がボンヤリしているみたいですね。


メインキャラが達也と和也と南しかいないのに、
全員ふんわりと間違えるというのは、かなり高度なテクニックです。
意外に技巧派です。


作品名称の由来を記事にされるぐらいですから、執筆者の方はご存じなのだと思いますが、
主人公が戦国武将の「上杉」を冠しているのに対し、
ヒロインのほうは、織田信長に対抗した「浅井・朝倉」の連合軍からとって、「浅倉」南です。



【この記事がヒドイ!③】
タイトルの由来が、別に衝撃でも驚愕でもない


今回の記事について、表記や内容の細かい点(ホントは細かくも何ともないけど)がツッコまれるのは、そもそも「タイトルの由来なんて衝撃でも何でもないから!」という、
壮大なツッコミを多くのファンが共有しているからです。


『タッチ』が「バトンタッチ」なんていうのは、
それこそ Wiki あたりにも堂々と書いてあるわけで、
「今さら記事にするか!?」「ヤフーニュースほかの転載先も少しは考えろよ!」と思われるのはやむを得ないところではないでしょうか。


っていうか、
じゃあ、どんな由来だと思っていたんだよ?


記事のなかでは、

天地がひっくり返るような事実


とか言ってますけど、

むしろひっくり返る前の事実のほうを個人的には教えてもらいたいです



つまり、もともと記事の切り口や組み立て方が恣意的であり、「ホントに『タッチ』に興味がある人間が書いたのか!?」という疑念をかき立てるつくりになっちゃっているわけですよ。



【この記事がヒドイ!④】
気になり出したらキリがない


そうなってくると、些末な部分まで疑いたくなってしまうのが、おろかな人間の性です。ゲスのカン繰りというヤツです。

記事内では、「ファンに衝撃が〜」とか言っていますが、
そのファンがいったい誰なのかについて、まったく触れていません。

ツイッターを適当に検索した結果なのか、執筆者が周囲と雑談したまとめなのか、それともコアなあだち充ファンの集会にでも参加したのか。
具体的に誰にとって衝撃だったのかは、今回の記事を成立させる根幹要素だと思うのですが、なぜ明記を避けるのでしょうか?


締めの一文も気になって仕方ないです。


ここから話は盛り上がっていくため、あだちの描いたとおり見事にバトンタッチできたのかもしれない。


……
見事にバトンタッチできたのかもしれない。


……
できたのかもしれない。





どっちだよっ!

なに、「できたのかもしれない」って?!

バトンタッチできたと思っているの? それとも、できなかったと思っているの?

「ここから話が盛り上がっていく」って言うなら、成功じゃないの!?
もし見事にバトンタッチできていなかったら、盛り上がらなかったんじゃないの!?



……とかね。



ネットニュースが大変なのは、僕もわかっているつもりですけど、
こういうのって「ダ・ヴィンチ」編集部も本意じゃないでしょう。

もちろん、あだち先生や「タッチ」が話題になるのはうれしいことだし、
もっとみんなが喜べるような、良い感じにならないものかなー。



考察『昭和元禄落語心中』/〝表現者〟と〝体現者〟の対比


   
    『昭和元禄落語心中』


ちょっとお仕事の関係で、アニメ『昭和元禄落語心中』のDVDを手に取ったら、
結局、面白くて第1シーズンの最終話まで一気に観直すはめになりました。

ので、考察&雑感を備忘録。
いつもの「ネタバレ配慮のショートコラム」的なアレです。

─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・─・

『昭和元禄落語心中』は、
有楽亭八雲(八代目)と、彼の親友・有楽亭助六(二代目)、
さらに八雲の弟子・有楽亭与太郎という、
3人の落語家を中心にして巡る物語です。

観始めて、まず思うのは

「夏目漱石の『こころ』みたいな話だなあ」

ということ。

理知的な師、彼を慕う若者、ほのめく暗い過去……。
ああいう雰囲気が好きな人は、まあハマる気がします。

で、「先生」と「K」がそうであったように、
『〜落語心中』においても
「八雲(というか菊比古)」と「助六(あるいは初太郎)」
の過去が、とても重要な意味を持っているわけです。


この作品を観ながら、僕がもっとも
「うまいなぁ」「エライこと描くなぁ」と考えさせられたのは、

「〝表現者〟と〝体現者〟の対比」です。



   


落語というのは、いうなれば
「人間の業をあたたかく受けとめるエンターテイメント」です。

人間が人間らしいがゆえに、陥る滑稽さ、醸し出す可笑しみ……。

そう考えると、八雲(というか菊比古)は、
落語からもっとも遠く離れた生活を送っている男です。

彼は人生全般において己が理性を働かせ、
不相応な振る舞いを自らに許しません。

彼にとって落語は、
生きるために身に付けざるを得なかった「芸」であり、
だからこそ大名人と呼ばれるほどの
腕前にまで磨き上げることができた、ともいえます。


一方、助六(あるいは初太郎)は、
自分と周りの感情を何よりも優先させる、
人間味が服を着て歩いているような男です。

彼にとって落語は、自分自身の「生き様」であり、
だからこそ彼の噺は、名だたる真打ちを差し置いて
人々の心を捉えて放さない、と解釈することができます。


が、しかし……。



   



助六(あるいは初太郎)は、

誰よりも落語的であったがゆえに、
その業によって身を滅ぼしていきます。


落語の〝表現者〟となった八雲(というか菊比古)と、
落語の〝体現者〟となった助六(あるいは初太郎)。


2人の生き方を決定的に分けて見せたのが、
みよ吉(もしくは百合絵)という哀しい女性の存在でした。

落語から遠く離れた価値観で生きていたから、
みよ吉を退け、落語を選ぶことができた八雲(というか菊比古)。
落語そのものの人生を送っていたから、
みよ吉を受け入れ、落語を捨てる決心をした助六(あるいは初太郎)。

この皮肉めいた対比が、『〜落語心中』という作品の
根幹を成していることは疑いようがありません。

浅田次郎の小説『三人の悪党 きんぴか1』に、
以下のようなセリフが出てきます。

「あれほど言ったじゃねえか、浪花節は聞くもんで、歌っちゃならねえって」


助六(あるいは初太郎)に聞かせてあげたい言葉です。

『〜落語心中』、来年のアニメ第2シーズンも楽しみです。

声優さん連載インタビュー


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『月刊ヒーローズ』連載中の本格声優マンガ「ボイスカッション」に連動する形で、
有名声優さんたちのインタビューを毎月、連載しています。

これまでご登場いただいたのは、

・潘めぐみ さん(アルテイシア、ゴンなど)

・小野友樹 さん(東方仗助、火神大我など)

・関智一 さん(ドモン、スネ夫、ウィスパーなど)

・長沢美樹 さん(伊吹マヤ、クリームパンナなど)

・小西克幸 さん(男鹿辰巳、カミナなど)

・山口勝平 さん(犬夜叉、工藤新一、ウソップなど)

・柿原徹也 さん(ナツ、シモン、ガルマなど)

・茅原実里 さん(長門有希、南千秋など)


すごい豪華なラインナップですよね。毎回インタビューさせてもらうのが楽しみです。

お話された内容は、コミックスにも収録されています。
ほかでは聞けないネタが、あるかもです。




  

「スター・ウォーズ」記事を書きました。@「アエラ」


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発売中の 「アエラ」2015年 12/21号 、「スター・ウォーズ」特集にて原稿を書きました。

「30年超のシリーズを10分で読み解く」という、
どう足掻いても誰かには怒られるであろう、無謀なミッションに挑んでおります。

執筆中、ファミレスで関連書籍を山積みしていたら、隣の若いカップルが
女子「スター・ウォーズ、またやるんだよね。観に行こうよ」
男子「観たことあんの?」
女子「あるけど、よく覚えてない。何か主人公が闇堕ちしてた」
などという会話を始めました。

あのときの彼女に、ぜひ読んでもらいたい記事です。

ちなみに今号は、表紙も「スター・ウォーズ」。
ドロイド3体が表紙を飾るのは世界初&「アエラ」独占だそうです。

「進撃の巨人」記事を書きました。@「アエラ」


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「アエラ」(朝日新聞出版)2015年 8/3 号にて、「進撃の巨人」特集の記事を書きました。

〝進撃の巨人現象〟に隠されたファン心理と、識者の方々の見解などをまとめた分析のほか、
巨大仏やゴジラなどを引き合いに「なぜ人は大きなものに魅入られるのか」といったコラムなどを書いています。

個人的には、〝グロテスクで残虐なバトルもの〟であるこの作品が
「なぜ10〜20代の女性たちに支持されるのか?」という疑問を常に抱えながら
各方面に取材していたのですが、早稲田大学文学部・大学院教授の高橋俊夫先生による
「解決不可能性の連鎖が物語になった作品だから」という指摘は、かなり腑に落ちました
(詳しくは記事のほうを読んでいただければと思います)。

あと、記事には書かなかったのですが、やはり高橋先生が仰ったセリフの中に
「進撃の巨人は〝現象〟にはなっても、ガンダムやエヴァのような〝世代〟は生み出さない」
というのがあって、とても印象に残りましたね。
何となく肌感としてわかるところ、あります。


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【 ツクイヨシヒサ 】


マンガ評論家&ライター。1975年生まれ。書籍、雑誌、ムック、インターネットなどで活動。

●ツイッターはこちら↓ https://twitter.com/tukui88

●執筆・取材・講演依頼等のお問い合わせは、「ac@andac.jp」よりお願いいたします。

●著書「あだち充は世阿弥である。──秘すれば花、『タッチ』世代の恋愛論」(飛鳥新社)発売中。

  


●編著「ラストイニング 勝利の21か条 ─彩珠学院 甲子園までの軌跡─ (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)」(小学館)発売中。

  


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