ツクイヨシヒサの「必筆!仕事人」

マンガ評論家&ライターのツクイヨシヒサによるブログです。酸っぱいブドウの酸っぱさについて、主に語っていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

2007年08月

人間の「業」を読むならこの一冊

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梁石日著『血と骨』


著者である梁石日(ヤン・ソギル)氏の実父の半生をモデルにした小説です。
山本周五郎賞を受賞し、映画にもなりました。


この小説、とにかく主人公の金俊平が強烈です。

無口で巨躯、短気で暴力的。金に汚い吝嗇家。
他人に冷たく、孤独に動じず、野獣のような性欲を持て余している。。。


そんな男。



彼の生き様に、人間的な美徳を見出すのは困難です。

しかし。。。

 では、彼は「悪」なのか?

これが、この作品のポイントだとオレは思いました。



金俊平には、この世で2つだけ信じている力があります。

「暴力」と「金」です。

そして彼には、たった1つだけ付き従うモノがあります。

「欲望」です。


通常、これらを必要以上に振りかざす人間を我々は「悪」と呼びます。

しかし金俊平の場合、振りかざしているというよりはむしろ、
それにすがってしか生きられない。。。と言ったほうが正しい。


彼は孤独です。
社会的な弱者であり、社交性にも恵まれず、愛も友情も知りません。
しかしそれゆえに、甘えや見栄といった通俗的な感情からも解放されています。

彼から見れば、人間が暴力に脅え、金にひざまづくのは自然の摂理。
その力を持ち続けることが、人生にとってもっとも重要なことです。

もっと言えば、その事実に対する揺るぎない確信が、
周囲を震え上がらせる「圧倒的な生命力」を彼にもたらしています。



これは我々が考えているような「悪」ではありません。

人間が生まれながらに持っている「業」のようなモノです。

その証拠に彼は、しばしば悪徳の代名詞となるような「倒錯した悦び」を欲しません。
快楽に耽溺することもありませんし、贅沢を極めようともしません。

彼が望むモノは詰まるところ、すべて我々が先天的に持っている欲求。。。
個の生存であり、種の保存であり、安住への渇望に集約されます。


人間の本性が生んだ、異形の怪物。。。金俊平。


その「業」深き人生を味わいたい、という方はぜひ。

日本語 乱れ咲き

あちこちで日本語の乱れが嘆かれてる昨今。
唐突ですが、オレが最近「その日本語はどうなのよ、アナタ?」と
思ったベスト3を挙げたいと思います。


【第3位】 飯田橋でオレの行く手を遮ったオバハン

オバハン「ちょっと!!」
オレ  「。。。??」
オバハン「警察病院に行きたいんだけど!」



。。。はぁ、どうぞ。( ̄  ̄#) ご勝手に。

イマドキ道の聞き方ぐらい小学生でも知ってますですよ。




【第2位】 喜多方ラーメン坂内の女性店員


店員「ご注文はお決まりですか?」
オレ「えっと、ラーメンと餃子、それにライス大盛りで」
店員「ライスは普通盛りしかありません」



。。。いやいやキミね、アリやナシやなら

あるやろ? ( ̄  ̄メ) 米があるんだから

もしマニュアル通りの対応なら、そのマニュアル間違っとるで。




そして、栄えある【第1位】は。。。

撮影で出会ったカメラマンさん です。


最初に断っておきますが、とても腕のいい方でした。
被写体(女性)とのコミュニケーションも、できあがりの写真もバッチリです。

ただ「○○的なモノ」というのが口癖のようで、
それを撮影中に連呼されるんですよ。
いや、別にダメだってわけじゃないんですけど。。。


「何か水分的なモノでも飲む?」
「ちょっとボード的なモノ、持ってみよう」
「そのポーズだと帽子的なモノがズレちゃうね」
「そこの白いモノ的なモノ、どかしてくれる?」
「そのまま、足的なモノもアゲてみようか?」





足的なモノってなんだ? ( ̄Д ̄;) そこは断定しろよ。


日本語ってムズかしーにゃー。

もし世界征服をしたら。。。

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岡田斗司夫著『「世界征服」は可能か?』


これね、もうタイトルがズルイですよね。

こういうのを岡田さんみたいな人以外に
やらせる編集者がもっといるべきだよね。

オレとかね。


まあ、それはいいとして、つまりこの本では、

・世界征服をしたい人にはどんなタイプがいるのか?
・なぜ世界征服をたくらむのか?
・実際にどんなスキルが必要なのか?

なんてことを書いているわけですが、
もとが講演か何かだったらしく、
前半のタイプ分けとかは割と面白いのに、
後半は正直グダグダな感じがしました。

もっと具体的に、「テレビ局の占拠の仕方」とか
「破防法の適用される瞬間」とか「国連軍に勝つ方法」なんてのを
詳しく書いてもらえると、「ほー」とか「へー」とか言えたんですけどね。


この本で考えさせられるのは、ズバリ1点だけなんですよ。

「なんで悪の軍団は世界征服がしたいのか?」



。。。これだけ。

でも、これってじつは奥が深くて、
例えば子どもの頃に「社長と課長、どっちがいい?」って聞かれたら、
おそらく100人が100人「社長!」って答えるでしょうけど、
大人になってからだとそれほどでもないはずなんですよ。

社長なんて結局は雑用係ですからね。

ミュージシャンやアイドルも同じ。
子どもの頃に「スゲーなー、なりてーなー」と思っていても、
誰でも大人になるに連れ、
「あんな仕事、大変やろなー。アホなツラしてXXXとか行けないんだろなー」
なんて思うモンですよ。

で、世界征服もそれと似てるワケです。

征服して「それでアンタなにすんの?」という(笑)。

だって征服した瞬間に、世界は自分のモノですから、
わざわざ悪いことして破壊したり、秩序を乱す必要はないんですよ。
むしろ、管理したり維持したり、メンドくさいことが増えちゃって
あんまり楽しいことなんかねーんじゃーの、という。

そんな能力や意思の強さがあんのなら、
もっと自分一人のために使っちゃえばいいのに、
という疑問がわいてきちゃうワケです。

そのことを明示しただけでも、この本には意味があるんでしょうね。

ダジャレじゃないもん、言霊だもん

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『日本人 数のしきたり』


相撲取りが踏むのは、どうして「四股」というのか?
「八幡様」とは、いったいどんな神様なのか?
「三途の川」には、なぜ「三」という数字が使われてるのか?

なんていうのが、この本を読むとわかるんですけど、
個人的には第一弾の『日本人のしきたり』よりは楽しんで読めました。

まあ。各々の説明文が単調だったり、同じような話が重複したりと、
本としての完成度はビミョーですが。


オレも案外、そのタイプですけど、
日本人というのは「数」にこだわりますよね。

料理が一切れだと「人を切る」、三切れだと「身を切る」、
四切れは「死」につながるから、二切れじゃないとダメとか。

「ダジャレじゃねーか」とは誰もツッコまないんですね、言霊の国ですから。



「奇数は陰陽思想で陽数=縁起がいい」「偶数は二つにわかれる=縁起が悪い」、
でも「九は苦だからよくない数字」「八は末広がりでいい数字」、
なんてのがあっても、そこにイチイチ整合性は求めませんし、

間違っても「アルファベットのAは末広がりだね」とか、
「Vは尻すぼみだ」「AVはどっちなんだ」なんて言わないんです、オトナですから。


そんな日本がボクは大好きですマル

SLAPP(スラップ)反対!

サイゾーに寄せたコメントが元でライターが訴えられた、
いわゆる『オリコンうがや訴訟』のような
組織が個人を狙い撃ちにし、言論を封じ込める方法を、

SLAPP(スラップ)=StrategicLawsuit Against Public Participation
              (公衆の言論を抑圧する戦略的訴訟)


というそうです。知らなかったです。


まあ、オレはジャーナリズムや言論の自由なんて、
チョットおこがましいライターですけど、
こんなタイトルでも付けて一言書いておけば、
若いコたちが問題意識を持って「SLAPP 反対」とかって検索したとき、
1つでも検索数が増えて、モチベーションが上がるかなーと思って、
そうそう、書いてみたわけですよ。

というわけで、SLAPP反対ー!

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【 ツクイヨシヒサ 】


マンガ評論家&ライター。1975年生まれ。書籍、雑誌、ムック、インターネットなどで活動。

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●著書「あだち充は世阿弥である。──秘すれば花、『タッチ』世代の恋愛論」(飛鳥新社)発売中。

  


●編著「ラストイニング 勝利の21か条 ─彩珠学院 甲子園までの軌跡─ (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)」(小学館)発売中。

  


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