ツクイヨシヒサの「必筆!仕事人」

マンガ評論家&ライターのツクイヨシヒサによるブログです。酸っぱいブドウの酸っぱさについて、主に語っていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

2010年10月

映画『十三人の刺客』を観た。




映画『十三人の刺客』(三池崇史監督/役所広司、山田孝之ほか)


(あらすじ)
史上最悪の暴君・松平斉韶(稲垣吾郎)を暗殺すべく、集まった13人の刺客たち。
果たして彼らは、立ちはだかる200人の壁を討ち破り、見事に己の誇りと命を守り切れるのか──




久々に大人向けのエンターテインメントを観た気がします。

問答無用で面白かった。


本作は、故・工藤栄一監督が約47年前に発表した作品のリメイクです。

工藤監督と言えば、オレは映画『必殺!3 裏か表か』を
真っ先に思い浮かべてしまうんですけど、
この『十三人の刺客』もまさに「裏か表か」という内容でした。



●「表」のほうは、じつにわかりやすいです。

「極悪非道で許せない権力者がいる。弱きを助けるために男たちが立ち上がる」

この文章だけで誰でも胸がトキめくんですよ、男のコなら。
そこに理由なんてないから!



さらに、

「選ばれし仲間たちが、大軍を相手に立てこもり、無謀な戦いに挑む」

だから理由なんてないからw 『拙者たちの七日間戦争』だからwww





ただ、これだけで終わらせたら、本物の日本映画の奥深さは出せないと思うんですよ。


●「裏」に目をやると、この映画の別の顔が見えてきます。(以下、一部ネタバレあり。ご注意を)


「戦なき世の、武士の哀れさと滑稽さ」

この作品で描かれているのは、江戸の泰平が続いて久しい弘化年間。

刀よりもソロバンがモノを言う時代です。

そんな中、武芸を磨き、悪を倒すために命をなげうつ13人の侍たちは、
哀れであると同時に、とても滑稽な存在です。

一言でいってしまえば、ピエロ。

本人たちは必死でも、結果的には周りにいいように使われているだけ。

主人公の島田新左衛門(役所広司)が斉韶暗殺を命じられたのも、
結局、彼が妻も子どもも持たない独り身だったから、という理由が大きかったわけですよ。



「敵同士である斉韶と刺客たちは、じつは同じ穴のムジナ」



前述したように、新左衛門たち13人の刺客は、
今の時代に居場所を見つけられない不遇の侍たちです。

だからこそ、「生きる意味(=死ぬ意味)」を求めて、
己に何の得もない「義の戦」に飛びこんでいきます。

しかし、平和な世に「生きる意味」を見出せないのは、じつは敵である斉韶も同じ。

高貴な血筋に生まれながら、絶対的な権力を握れないという理不尽さ。
対等に競い合い、話し合う仲間すら周囲にいないという孤独さ。

彼の残虐的な性格や、倒錯的な性癖は、こうした虚しさの裏返しともとれるわけです。


となると、この作品で描かれている戦いは、
単なる「時代に居場所がない人間同士のストレス発散合戦」でしかなくなってしまう。



「狂気のなかに放りこまれた常識人の悲劇」

その厄介な現場に巻きこまれてしまったのが、明石藩御用人・鬼頭半兵衛(市村正親)です。

この鬼頭というキャラクターは、おそらく作中もっとも常識的かつ優秀な侍です。
彼は「時代が求めている、あるべき武士の姿」をよく理解し、実践しています。

しかし皮肉なことに、彼は常識的かつ優秀であるがゆえに、
上司の斉韶に振り回され、好敵手である新左衛門に恐怖を覚えます。


いわば彼は、

 狂気のなかに放りこまれた一般人、

 東西麻雀対決に紛れこんだひろゆき、

 ウォーズマンの体内に入りこんだジェロニモ、

なわけです。



ラストシーンにあの男が現れた理由。(以下、結構なネタバレあり。要注意)


物語のラストシーンで、生き残った彼に声をかけてきたあの男。

オレは「幻」だと思うんですけど、どうですかね。

あの2人は、「侍」という生き方の合わせ鏡になっていて、表裏一体の存在です。

だから、あのときの会話は生き残った彼の心が自分に言わせたんじゃないかと。

あの男の姿を見たのも、彼だけですしね。



最後に。

本当はこの作品、「いつかテレビで観ればいいかな」と
思ってたんですけど、劇場まで観に行ってよかったです。

演出、演技、音楽、カメラワークはもちろん、「山の民」や「女の恨み」の表現方法など、
随所に「大人の視聴に耐え得る映画を残したい」というスタッフの気持ちが伝わってきました。

っていうか、この映画たぶん今のテレビじゃ、表現が大人すぎて放映できないですよね。





オズ・マガジンで紹介された話。





いま発売中の『オズ・マガジン』(スターツ出版刊)に、
拙著『あだち充は世阿弥である。』が紹介されています。



「あの本屋さんの名物店員さんが選んだ
 この秋に読みたいこの1冊


こんなコーナーで取り上げてもらえるなんて、ちょっと恐縮。

未読の方は、ぜひ「この秋」に読むようにwww



選んでいただいたのは、

文教堂書店 浜松町店さん(担当・橋さん)。


ありがとうございます。
数ある本の中で名前を挙げていただき、光栄です。

今度、扶桑社(@浜松町)に行く時は、必ず買い物して帰りますw





ベタですけど、誰かにこうやって自分が書いた本の話をしてもらえるのは、とてもうれしい。

ブログでもツイッターでも、ホントにちょっとでも話題に挙げてくれている人を見つけたら、
「うわー、直接会ってお礼を言いたい気分だなー」
「何なら飲みながら感想でも聞きたいんだけど」と、いつも思っている。感謝、感謝だ。


反対に、中古書店で売られている現場などを発見した時は、
「うわー、もしかしてツマんなかったのかなぁ」
「何ならどこがいけなかったのか、
 飲みながら小一時間ばかり問い詰めたいんだけど」と、やおらグレーな気分になる。容赦、容赦だ。


まー、両方とも同じ人かもしれないんだけどね。


何にせよ、読んでもらえたという事実が一番のモチベーションになるのですよ。


さあ、がんばって仕事するぞー!



 

一死二、三塁の得点パターン50



『ラストイニング』第2巻
(神尾龍原作、加藤潔監修、中原裕作画/小学館刊)





巷で「今もっとも面白い野球マンガ」とウワサの
『週刊スピリッツ』連載中の『ラストイニング』。


その第2巻において、主人公・鳩ヶ谷圭輔が次のようなセリフを述べます。


「お前さぁ、ワンナウト一、三塁から点が入るパターンって
 いくつあるか知ってるか? まぁ50通り以上はあるな……」



なるほど。
確かに一死一、三塁は点が入りやすい状況です。しかし、

本当に50通りもあるのか!? 本当に本当だろうな?

と長い間、気になっていました。





なので検証してみることにしたのです。パチパチ。




【オレが考え得る、一死一、三塁からの得点パターン一覧】


 1、シングルヒット
 2、ツーベースヒット
 3、スリーベースヒット
 4、スリーランホームラン
 5、スクイズ
 6、セーフティスクイズ
 7、ホームスチール
 8、パスボール
 9、ワイルドピッチ
10、打球をエラー
11、犠牲フライ
12、ボーク
13、ヒットエンドラン
14、バスターエンドラン
15、ランエンドヒット
16、挟殺プレイでエラー
17、フィルダースチョイス
18、ゲッツー崩れの間に、ホーム進塁
19、二塁単独スチールの送球間に、ホーム突入
20、一塁ランナーの挟殺プレイ間にホーム突入
21、内野安打の間に本塁突入
22、内野ゴロの間に本塁突入
23、外野ゴロの間に本塁突入
24、野手の送球がランナーに当たる
25、キャッチャーが投手へ返球する間にディレードスチール
26、スクイズを外したものの、ランナーへのタッチ間に合わず
27、ホームスチールで捕手が落球
28、インフィールドフライでアウト成立後、タッチアップ
29、スクイズを試みて、打撃妨害
30、スクイズを試みて、走塁妨害
31、ホームスチールを試みて、打撃妨害
32、ホームスチールを試みて、走塁妨害
33、ピッチャーが一塁に牽制し、暴投
34、ピッチャーが三塁へ牽制し、暴投
35、ピッチャーが一塁へ牽制し、一塁手がエラー
36、ピッチャーが三塁へ牽制し、三塁手がエラー
37、キャッチャーが投手への返球を暴投
38、キャッチャーが一塁へ牽制し、暴投
39、キャッチャーが三塁へ牽制し、暴投
40、キャッチャーが一塁へ牽制し、一塁手がエラー
41、キャッチャーが三塁へ牽制し、三塁手がエラー
42、一塁ランナーが盗塁を試み、キャッチャーが暴投
43、一塁ランナーにピックアッププレイを企て、ピッチャーが二塁手に暴投
44、一塁ランナーにピックアッププレイを企て、二塁手がエラー
45、一塁ランナーが盗塁後にオーバーラン→挟殺プレイ→三塁ランナー生還
46、スクイズの際、出場している選手・審判以外がプレイ中のボールに触る(決定は審判判断)
47、ホームスチールの際、出場している選手・審判以外がプレイの中のボールに触る(決定は審判判断)
48、スクイズ失敗(フライアウト)→一塁ランナー戻れずアウト。が、その間に三塁ランナーがホームインしており、なおかつアピールプレイもしないまま守備側がベンチに戻る
49、鳥が打球をくわえて飛び去る
50、ボールが粉々に砕け散る






。。。と、とりあえず、何とか50通り達成できた、、、けども!


最後までしっかりと読んでくれた方は、
オレが途中からいかにムリヤリ絞り出してるか、
キチンと理解してくれていることでしょう。

「30番台とか、ちょっとズルしてんじゃねーの?」とか言わないように。



で、これ最後のほう、かなりムチャなわけですよ。
48とか、普通に『ドカベン』愛読者以外には理解できないし。


あとは本気で「ボールが地中に埋まる」とか
「義経が八艘跳びする」ぐらいしか思いつかないんですよ。


それとも、他にもっとたくさんのパターンが余裕で存在してたりするのかな?
もしそうだったら誰か教えてほしいんだけど。


っていうか、アレ?
同じ「内野ゴロ」でも、「サードゴロ」と「セカンドゴロ」は違いますよ的なアレなの?


同じ「ゲッツー崩れ」でも、「武蔵坊の立ち往生」は別格、みたいな話なの?


ただ速いだけのロングシュートでも、新田くんが打つか松山くんが打つかで
「隼シュート」になったり、「イーグルショット」になったりするってことなの? どうなの?



コホン。



えー、というわけで
「ワンナウト一、三塁からの得点パターンが50以上あるか」については、


結論「あるっちゃー、ある」


でした。パチパチ。



いやー、思った以上に疲れた。。。。。。






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【 ツクイヨシヒサ 】


マンガ評論家&ライター。1975年生まれ。書籍、雑誌、ムック、インターネットなどで活動。

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●執筆・取材・講演依頼等のお問い合わせは、下記の【メッセージ】フォームよりお気軽にどうぞ。ご意見・ご感想もお待ちしています。

●著書「あだち充は世阿弥である。──秘すれば花、『タッチ』世代の恋愛論」(飛鳥新社)発売中。

  


●編著「ラストイニング 勝利の21か条 ─彩珠学院 甲子園までの軌跡─ (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)」(小学館)発売中。

  


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