ツクイヨシヒサの「必筆!仕事人」

マンガ評論家&ライターのツクイヨシヒサによるブログです。酸っぱいブドウの酸っぱさについて、主に語っていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

2012年02月

最近、読んだ本(野球無頼編)

プロ野球選手には野球の技術以外に、我々凡人とはどこか違う、超越した部分があってほしい。

そう願っているのは、オレだけではないでしょう。



球道者、勝負師、豪傑、理論派…………。


破格の年俸を手にするプロ野球選手だからこそ、その生き様も規格外であってほしいと思うわけです。

野球の上手いサラリーマンが観たいんだったら、
みんな手っ取り早く社会人野球のほうに足を運ぶんじゃないでしょうか。


で、そんな日本プロ野球界に
連綿と流れ続けるのが「無頼派」の血なわけでして、

オレが最近読んだ無頼派野球人の本、3冊をご紹介しようと思います。




  

球道無頼 こんな野球をやってきた』(大沢啓二著/集英社刊)


「球界の親分」こと故・大沢啓二氏が1996年に発表した本です。


まず何がいいって、タイトルがカッコいい。


『球道無頼』



まんま任侠映画になりそうなタイトルです。

中身の任侠っぷりも半端じゃないです。



高校球児のとき、判定が気に入らなかった
  審判を試合後の球場トイレで蹴りつけたとか、

現役選手のとき、自分のことをバカにした
  外国人選手2人の前にドスを突きつけたとか、


にわかには信じがたい話が随所に登場します。


また、


大学受験のとき、英語の問題文を
  回答欄に書き写しただけで立教大学に合格した
(※)とか、

日ハム監督時代、阪急のベンチに
  盗聴器を仕掛けたことがあるとか、



もはや「だって無頼だから」では
誤魔化しきれない危険なエピソードも多数掲載されています。


(※)野球部のあと押しがあったという大学受験。正確には、以下のような試験内容だったとのこと。
 ・遅刻で2科目ドタキャン。
 ・英語 →1問目の問題文を2問目に、2問目の問題文を3問目の回答欄に……。
 ・社会 →いちばん大きな回答欄に日本地図を書く。





  

球界の野良犬』(愛甲猛著/宝島社刊)


続いて、元甲子園優勝投手であり、
プロとしてロッテ・中日で活躍した愛甲猛氏の問題作。
その名も『球界の野良犬』です。

先ほどの『球道無頼』が東映の任侠映画の匂いがするのに対し、
こちらは往年のVシネマの香りがプンプンと漂っています


論より証拠と言いましょうか、この本に掲載されている「はじめに」の冒頭を引用したいと思います。


「ケンカ、ドラッグ、ギャンブル、そしてドーピング。
 すべてが野球の肥やしになると信じて、
 やりたいことをやってきた」




いきなりトップギアすぎて、頭の整理が追いつきません。

我々凡人の世界では「ダメ、ゼッタイ」なことが、じつはすべて「野球の肥やし」だったのです。

『ベースボール・クリニック』は、なぜこの驚愕の事実を伝えてないのでしょうか。



と言いつつも、じっくりと読んでみると「予想以上に赤裸々な内容が綴ってあるな」という印象を持ちました。


高校野球で華々しく活躍する裏で、「やっていたのはタバコ、麻雀、女、バイク、シンナー」(本文より)。



こういうのって、何となくそうだとわかっていても、
本人たちが公言することはありません。

複雑な家庭環境や幼少期の貧乏生活、ヤンチャな青春時代、
栄光と屈辱の狭間で揺れ動いたプロ選手時代……。


とにかく最初から最後まで、歯に衣着せないで語ろうという強い意志が伝わってきました。

大沢親分の『球道無頼』が、「球界のご意見番だからこそ語れる回顧本」だとしたら、
こちらは「球界の野良犬だからこそ捨て身になれた自伝本」という感じです。






  

ハマの裏番 もつ鍋屋になる』(中野渡進著/ミリオン出版刊)



ラストは、横浜の中継ぎ投手からもつ鍋屋店主へと転身した中野渡進氏による一冊です。

前の2冊に負けず劣らず、こちらも攻撃的で反権力なノリなのですが、
一方で同書ならではの見どころもたくさんあります。


この本は、言うなればグラゼニ 無頼派バージョン』。


超一流になれなかったプロ野球選手の悲喜こもごもが詰まっています。


中野渡氏は社会人野球を経て1999年、ドラフト7位で横浜ベイスターズに入団。
2年目の2001年シーズンこそ中継ぎとして63試合に登板するも、翌年に右ヒジを故障。
2003年には解雇されてしまいました。

幼い頃から野球にまみれ、プロ野球選手にまで登り詰めながら、
思い半ばでマウンドをあとにした投手……。

その半生を、己に陶酔することなく、
独特の〝ナカノワタリ節〟で痛快に語ってくれています。


また、「登場する人物たちに体温を感じる」というのも、この本の魅力の1つです。

谷繁元信、小宮山悟、野村弘樹ら横浜ベイスターズの先輩陣、
同じ中継ぎとして苦楽を共にした木塚敦志、高校時代の恩師・横井人輝などなど。

中野渡氏が語る野球人たちは、みんな生々しく、血が通っています。

その人たちのことを中野渡氏は大好きで、
相手も中野渡さんのことを愛しているんだなー、
ということが読めば読むほど伝わってきます。


本を出す元プロ野球選手というのは、そもそも球史に足跡を残すような名選手がほとんど。
内容も、多くは周囲のイメージに配慮されたものになっています。

そういう意味において、本書はその存在自体が特殊な一冊と言えるでしょう。





  

『ラストイニング』32巻発売。




『ラストイニング』の32巻が発売されました。


夏の甲子園2回戦、打撃重視の初出場校・大豊高校との試合が描かれています。



見どころは何と言っても、彩珠学院のワガママ王子・日高をして
「打撃だけなら聖母より上かもしんねぇな」と言わしめた大豊の超重量打線と、
彼らを育てた九州の攻めダルマ・大友監督の采配です。

大豊という学校は一見、
振って振って振りまくる打線&豪放磊落な監督の組み合わせという単純明快なチームに見えますが、
その実、近代野球に相応しい、駆け引きと判断力を兼ね備えたクレバーなチームです。


そんな相手に対し、ひと筋縄ではいかない策士・鳩ヶ谷はどんな手を講じていくのか。
愛弟子とも言える八潮と、日高のバッテリーはどう対処していくのか。


気になる本編の中身については、コミックスで確認してほしいのですが、
個人的に「ふむぅ、ふー!」と鼻の穴を大きくしてしまったのは、以下の2点。


・八潮&日高のバッテリー(特に日高)が、
  完全に鳩ヶ谷から自立し、試合を支配し始めていること!

・鳩ヶ谷が、1点を追う6回裏・無死一塁の場面で、
  ランナーを走らせ、憤死させるという
   誰の目から見ても明らかな采配ミスを犯してしまうこと!





果たして、この2点が試合全体にどのような影響を与えていくのか!?


『ラストイニング』はホントに奥が深い!!
              (`・ω・´) ふむぅ、ふー!




 
tsu-c2-2



   
【 ツクイヨシヒサ 】


マンガ評論家&ライター。1975年生まれ。書籍、雑誌、ムック、インターネットなどで活動。

●ツイッターはこちら↓ https://twitter.com/tukui88

●執筆・取材・講演依頼等のお問い合わせは、下記の【メッセージ】フォームよりお気軽にどうぞ。ご意見・ご感想もお待ちしています。

●著書「あだち充は世阿弥である。──秘すれば花、『タッチ』世代の恋愛論」(飛鳥新社)発売中。

  


●編著「ラストイニング 勝利の21か条 ─彩珠学院 甲子園までの軌跡─ (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)」(小学館)発売中。

  


メッセージ

名前
メール
本文