ツクイヨシヒサの「必筆!仕事人」

マンガ評論家&ライターのツクイヨシヒサによるブログです。酸っぱいブドウの酸っぱさについて、主に語っていきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。

ラストイニング関連

「ラストイニング」堂々完結!

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「週刊ビッグコミックスピリッツ」2014年4月21日号にて、
高校野球マンガ「ラストイニング」が最終回を迎えました。

いやー、ついに終わってしまいましたねぇ。

寂しいですけど、「限定1年の監督」を描いた作品だったわけですから、
ここでキレイに終わったほうが、後年に傑作・名作として残りやすくなったでしょうか。


(以下、ネタバレがありますのご注意を)






で結局、鳩ヶ谷は日本を離れ、ブラジルに渡ったのですが、
ラストシーンで高校野球界への復帰を匂わせるセリフも登場。

「もしかしたら続編も!?」「別の学校を率いてサイガクと戦う?」
「八潮や剛士と対決とか?」など、想像は膨らむわけですが、まあどうでしょうか。


コミックスの最終刊は第44巻です。
週刊連載のときと、ラストシーンが少しだけ違ってましたね。


  

『ラストイニング』35巻発売。

  


『ラストイニング』35巻が発売中です。

帝大一高との試合も中盤を迎え、ますます白熱!


今巻で強く印象に残ったのは、帝大一高・赤羽監督

特に、彼の指揮官としての性質 です。


赤羽監督は、試合が始まってもどこか飄々とし、つかみどころがありません。

大豊高・大友監督のように明るく選手を鼓舞するわけでもなく、
聖母学苑・桐生監督のように冷ややかに試合を分析し尽くすわけでもない。

ブツブツとボヤくように試合展開を眺めては
時折、「なあ?」と隣にいる選手に同意を求めるだけ。

たまに、チームのネジを巻くために気合いを入れることもあるが、
基本的には鳩ヶ谷と同じ、「相手の嫌がることをする」タイプ。

鳩ヶ谷本人も、前巻で
「どっちがキツネかタヌキか分かんねーけど、とんだ化かし合いになってきた」
とグチっており、赤羽監督も
「策士だからね、鳩ヶ谷クンは………」
と煙たそうに呟いていました。

お互いに似た者同士であるため、相手の性格の悪さがよくわかってしまうわけですね。

というわけで、ここまでは

赤羽監督=名門校を率いた鳩ヶ谷圭輔


という感じなのかなと思っていました。


しかし、この35巻では鳩ヶ谷ともまた少し違う、
赤羽監督の特筆すべき性質が見えてきました。

それは、運や流れを重視する姿勢です。

以下は、試合中盤〜後半にかけて起こったプレーの状況と、赤羽監督の対応をまとめたものです。


(状況)攻撃時、いい当たりが野手の守備範囲に飛び、悪い当たりがヒットになる。
                ↓
(対応)警戒して外してくる初球を強引にヒッティング。結果はヒット。


(状況)前打席で一死一、三塁からゲッツーを打った1年の木場が、再び同じ場面で打席へ。
                ↓
(対応)「打って欲しい時に打つ!!」イメージがあることを理由に強攻。タイムリーヒットに。


(状況)最終回、満塁策で塁を埋め、左打者との勝負を選んだ彩学ナイン。
                ↓
(対応)「ああ落ち着かれると揺さぶりかけたくなる」と、右打者を代打に。犠牲フライ。



上記のような采配から、同じ勝負師タイプの監督ではあるものの、

鳩ヶ谷が、己の手練手管を用いて、わずかな勝機を引き寄せる
〝策略家〟気質なのに比べ、

赤羽は、勝負の運気を読み取り、相手に流れを渡さないようにする
〝ギャンブラー〟気質 であることがわかってきました。


試合は大詰め。九回裏、帝大一高の攻撃。
二死一、二塁。点差は1点。
彩学は、このピンチをしのぎ、勝利を手にすることができのか!?

というところで、次巻へ続きます。



「第4アウト」と野球マンガ

「これは…マンガで出てきた
  あの場面!! 済々黌の頭脳勝ち」
(スポーツ報知より)


2012年、夏の甲子園2回戦。

済々黌(熊本)と鳴門(徳島)の試合で「第4アウト」を巡るプレーが起きました。


2-1で迎えた7回1死一、三塁。遊撃を襲ったライナーが好捕された後、一塁に転送され、併殺となったが、三塁走者の中村謙太二塁手(3年)は三塁に戻らず一気に本塁へ。3アウトよりも早くホームを踏み、生還が認められた。守備側の鳴門(徳島)のアピールがあれば入らなかった1点だが、済々黌はそれを承知で仕掛け、奪い取った。(日刊スポーツより)


同じようなシーンが水島新司『ドカベン』の
明訓 - 白新戦に描かれていたため、翌日の新聞はこぞって

「ドカベン流頭脳プレー」
「ドカベン走塁」
「ドカベン読んで大成功!」


と書き立てました。


守備側が「第4アウト」の置き換えを行わなかったために、
攻撃側の得点が認められた今回のプレー。


『ラストイニング』の地区予選決勝、
彩珠学院 - 聖母学苑戦にも登場しています。


 


『ドカベン』のほうはスクイズ失敗からの流れですが、
こちらはショートライナーからのダブルプレー成立。

より本件のプレーと相似しています。


もちろん解説本である『ラストイニング勝利の21か条』の中でも取り上げています。

 


「File18.コラム ルールブック
 プロですから完璧に理解できない、野球規則の落とし穴」


この章において、ライターの村瀬秀信氏(『プロ野球最期の言葉』などの著者)は、
同様のプレーが2011年のセンバツ、2009年秋の関東大会、1982年夏の甲子園などでも
起こっていたことを指摘しています。

つまり「第4アウト」の置き換えは、
我々が思っているほど〝幻のプレー〟ではない、
あらかじめ知識として持っていたかどうかが、
勝負の明暗をわけた、ということです。

事実、済々黌の選手は
「小学生の時に読んだ野球漫画『ドカベン』でこのルールを知った」(時事ドットコムより)
と語っており、この試合でも「狙っていた」(前同)ことを明かしています。


マンガで得た知識を実行に移す応用力もさることながら、
平成生まれの小学生にも読まれ続ける
『ドカベン』の影響力もハンパないです。



済々黌のみなさん、次はぜひ『ラストイニング』にもチャレンジしてみてください。



   

『ラストイニング』34巻発売。

  


今年もおいでませ、夏の高校野球シーズン!

ということで、『ラストイニング』34巻です。


引き続き、試合は帝大一高(帝都大学第一高校)戦。
内容はやや煮詰まり気味です。


以前33巻のときのエントリーで、
鳩ヶ谷のサイガク野球は、ここに来て

「1つの形になった」

と断言しましたが、
今巻ではむしろ、なんとな〜く

「アタマ打ちの様相」

を呈しています。


選手一人ひとりは、ほぼベストのプレイをし、
チーム全体として得点も積み重ねてはいるものの、
どうもアチコチに小さな綻びが見え隠れするこの試合。

送りバント失敗、相手のスクイズ阻止できず、
ゲッツー崩し実らず、ラン・エンド・ヒット直撃、
そして何より、先発投手のムリな続投……。


ミスをしても、大きな傷につなげていないのは、
紛れもなくサイガクの実力なのですが、
一方で、甲子園のベスト8以上を狙うためには、
それ以上の〝何か〟が必要であることもうかがわせています。


象徴的なのが、先発スティーブの存在です。

彼は本来、この試合に登板するような投手ではありません。
エース日高を温存するために、やむなくマウンドへ送られています。
本人もその事実をよく理解しているため、ピッチング自体に乗り気を見せません。

それは、まあいいです。気持ちはわかります。
問題は彼をリードする捕手のほうです。

今までは捕手である八潮が、精神面でも配球面でも上手くリードしてやってきたのですが、
この試合に限っては、その態度が〝度を越している〟ような気がします。

ニラんだり、諭したり、ゲキを飛ばすだけでは収まらず、
円陣のなかで腹を殴ったり、怒って全力で返球したり……。

この噛み合わない感じは、八潮とスティーブが
もはや野球選手として同じステージにいないことから起こっています。

全国上位レベルの捕手になりつつある八潮に対し、
進歩らしい進歩を見せないスティーブ。

その隔たりが、2人の関係性を変化させていっているのです。


仮にもし、日高に次ぐ2番手、3番手の投手がサイガクにいれば、
序盤からペースを握ったこの試合は、八潮の力だけで難なく勝ち上がれていたはず。


現状はそうなっていないわけですから、つまり

「チームとしての〝力の限界〟」

が見えてきたということです。


鳩ヶ谷の指揮に、いつもの執念めいた強引さを感じないのも、おそらく同じ理由でしょう。

本気で勝ちに行くなら、日高にムリをさせるしかない。しかし、

ムリを強いる時点で、もはや実力ではないと



さあ、サイガクの夏はいつまで続くのか。
35巻に期待です!




 

『ラストイニング』33巻発売。

 



『ラストイニング』の33巻が発売されました。


夏の甲子園2回戦、大豊との試合もクライマックス!

四番・大宮が主砲の一撃で勝負を決めるか!?

エース・日高がついに甲子園で150キロを記録!?



今巻も、目が離せない展開が続きます。

個人的な印象としては、

鳩ヶ谷監督によって1年で作り上げられたチームが、

この試合で1つの〝完成形〟になったなぁ、

という感じですね。



地方予選のときから悩みに悩み抜いてきた大宮剛士は、
ようやく「自分らしいバッティングとは何か」の答えを見つけつつある状況。

キャッチャーの八潮創太は、エースと監督からの信頼を勝ち取り、
配球だけではなく、試合そのものをリードできるような選手になりました。

またチーム全体も、エラー絡みの失点を許したところで
「1点ゲーム」を思い出し、気持ちを入れ替えて追加点を防ぐなど、
随所に勝負強さを見せています。


なかでも注目したいのは、やはり日高直哉。

彼は本当に、ピッチャーとして、野球選手として、人間として、大きく成長しました。


鳩ヶ谷と出会ったばかりの頃、剥き出しの反抗心で逆らってばかりいた日高。

当時の彼に対し、鳩ヶ谷が投げつけたセリフをここであらためて引用してみたいと思います。


「まわりは自分よりヘタクソな連中ばかりで、
 いつも足を引っ張られて点を取られた……そう思ってんだろ。(中略)
 だからダメなんだよ!! お前は!!」(第2巻より)

「味方のエラーでピンチになっても それを自分の力で抑えるのがエースだろ!?
 まわりが気になるのは 自分の投球に集中していない証拠だ!!」(前同)

「日高……三振を取りたいんだろ?(中略)
 だったら目指せよ……150キロを!!」(前同)




今の日高が、あの頃の未熟な野球少年が目指そうとした
1つの〝完成形〟であることが、これらのセリフからもうかがえます。


日高のこうした成長を「マンガだから」と切って捨ててしまうことは簡単ですが、
現実の高校野球でも、指導者ひとりで高校生はガラリと変わってしまうものです。


さて、次はいよいよ甲子園3回戦。
東東京代表・帝大一高(帝都大学第一高校)の登場です。

甲子園常連校を相手に、鳩ヶ谷の取った決断とは!?



のっけから、いきなり試合が動きます!






 
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【 ツクイヨシヒサ 】


マンガ評論家&ライター。1975年生まれ。書籍、雑誌、ムック、インターネットなどで活動。

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●著書「あだち充は世阿弥である。──秘すれば花、『タッチ』世代の恋愛論」(飛鳥新社)発売中。

  


●編著「ラストイニング 勝利の21か条 ─彩珠学院 甲子園までの軌跡─ (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)」(小学館)発売中。

  


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